軽貨物ナレッジ by K-LEDGE
経営・事業拡大軽貨物事業者向け

軽貨物の安全管理を高度化する|データ活用とリスク管理の進め方

軽貨物運送事業では、増加する事故件数を受け、2025年4月から安全対策が強化されています。安全管理者の選任、各種記録の義務化、国土交通大臣への事故報告など、義務づけられた内容と対応を解説します。

軽貨物ナレッジ編集部公開 2026年8月26日時点の情報
目次
  1. 軽貨物運送事業における安全対策強化の背景
  2. 2025年4月から施行されている安全対策の全体像
  3. 義務づけられている主な安全対策と記録管理
  4. 義務化された安全対策における経過措置と罰則
  5. 軽貨物運送事業における安全管理高度化への取り組み

軽貨物運送事業における安全対策強化の背景

近年、EC(電子商取引)市場の拡大に伴い宅配便の取扱個数が増加しており、軽自動車による運送需要が拡大しています。しかしその一方で、事業用軽自動車の死亡・重傷事故件数は増加傾向にあります。国土交通省の報告によると、平成28年から令和5年にかけて、保有台数1万台当たりの事業用軽自動車の死亡・重傷事故件数は約4割増加しており、また、平成28年から令和4年にかけては約5割増加している状況です。これは、一般の事業用貨物自動車の死亡・重傷事故件数が同時期に約2割減少しているのとは対照的です。

こうした状況を受け、国土交通省は貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化する制度改正を行い、令和7年(2025年)4月から施行しています。この制度改正は、事故件数の低減を目的としたものです。

2025年4月から施行されている安全対策の全体像

国土交通省は、貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するため、「自動車事故報告規則等の一部を改正する省令」等を令和6年10月1日に公布しました。これに伴い、講習機関に係る登録関係は令和6年11月1日から、貨物軽自動車運送事業者に対する規制関係は令和7年(2025年)4月から施行されています。この制度改正により、貨物軽自動車運送事業者(バイク便事業者は除く)には、一般のトラック業者並みの厳しい安全管理が求められています。

この制度改正で求められるようになったのは、貨物軽自動車運送事業に特化した安全対策です。なお、個人で軽貨物事業を行っている方も、これらの安全対策の対象です。

義務づけられている主な安全対策と記録管理

2025年4月から義務づけられている主な安全対策は、次のとおりです。

第一に、貨物軽自動車安全管理者の選任と講習の受講です。貨物軽自動車運送事業者は、営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、講習を受講することが義務づけられています。選任時には、運輸支局等を通じて国土交通大臣への届出が必要です。また、選任後も2年ごとに講習を受講しなければなりません。貨物軽自動車安全管理者とは、運行の安全確保に必要な知識を持ち、安全確保に関する業務を管理する者を指します。

第二に、業務記録の作成・保存です。毎日の業務開始・終了地点や業務に従事した距離などの業務記録の作成が義務づけられており、1年間保存する必要があります。記録内容には、氏名、車両番号、乗務開始・終了の日時と場所、走行距離、休憩時間などが含まれます。

第三に、事故記録の作成・保存です。事故が発生した場合、その概要や原因、再発防止対策などの事故記録を作成し、3年間保存することが義務づけられています。

第四に、国土交通大臣への事故報告です。死傷者を生じた事故など、一定規模以上の事故が発生した場合は、運輸支局等を通じて国土交通大臣へ報告することが義務づけられています。報告は事故発生後30日以内に行う必要があります。対象となる事故には、転覆、火災、死亡、重傷(14日以上の入院)、10台以上の多重衝突などが含まれます。

第五に、特定の運転者への指導・監督および適性診断です。事故惹起運転者、初任運転者、高齢運転者などの特定の運転者に対しては、特別な指導や適性診断の受診が義務づけられています。また、運転者の氏名、指導内容、適性診断の受診状況などを記載した貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、営業所に備え置くことも義務です。

第六に、アルコールチェックの実施と記録です。黒ナンバー(事業用)の場合、2025年4月より「貨物自動車運送事業輸送安全規則」に基づいた厳格なチェックが求められています。業務開始前と終了後にアルコール検知器を用いて確認し、その記録を1年間保存することが求められます。

義務化された安全対策における経過措置と罰則

既存の貨物軽自動車運送事業者に対しては、一部の規制に猶予期間が設けられています。具体的には、貨物軽自動車安全管理者の選任については施行後2年、特定の運転者への特別な指導及び適性診断の受診については施行後3年の猶予期間があります。しかし、業務記録、事故記録、重大事故の国土交通大臣への報告については、2026年現在すでにすべてのドライバーに義務化されています。

これらの義務を怠った場合、行政処分の対象となるだけでなく、最大100万円の罰金が科せられる可能性があります。特に業務記録がない場合や虚偽の記載があった場合、また重大事故の報告を怠った場合には、重い罰則が適用されることになります。

軽貨物運送事業における安全管理高度化への取り組み

2025年4月に施行されたこの制度改正は、軽貨物運送事業の安全管理を高度化するための重要な一歩です。義務化された安全対策は、単なる規制対応に留まらず、データ活用とリスクマネジメントの観点から事業の継続と発展に不可欠です。正確な業務記録や事故記録は、事故原因の分析と再発防止策の策定に貢献し、安全管理者は組織全体の安全意識向上と体制構築において中心的な役割を担います。

国土交通省は、これらの安全対策に関する解説リーフレットやFAQ、解説動画、各種記録の様式例、指導監督マニュアルなどを公表しています。これらの一次情報を活用し、制度への適切な対応と、より高度な安全管理体制の構築を目指すことが、軽貨物運送事業者にとって喫緊の課題となります。

義務化された安全対策を着実に実行し、常に安全意識を高く保つことで、リスクを最小限に抑え、信頼される軽貨物運送事業者として成長することが期待されます。

出典・参考

官公庁など一次情報を中心に確認しています(確認日を併記)。

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